作動中の科学 science in making

科学技術社会論
科学技術社会論の挑戦1 科学技術社会論とは何か (科学技術社会論の挑戦 1)

「作動中の科学」とは、科学者が持っている「科学というものは研究によってその内容が日々変化し続ける」という科学者自身が持つ科学観である。一方、科学者が持つ「作動中の科学」という概念とは反対に、一般の人々の持つ科学観を「固い科学観」と呼ぶ。これは、科学によって明らかになったことは変わることがない真理であるという考え方である。

この「固い科学観」と「作動中の科学」という2つの科学観の対比は、水俣病の原因物質の特定の際に現れた。水俣病が発見された当時、マンガン説やセレン説、タリウム説などさまざまな物質が水俣病の原因ではないかとして語られてきた。これは、科学の理論というものは、日々作られ続けるものであるという「作動中の科学」という観念をもつ科学者にとっては、当たり前のことであった。しかし、このような態度は、「科学を用いれば、何が原因物質であるかがすぐにわかる」「科学とは一度明らかにしたものはこれからもずっと正しい」という「固い科学観」を持つ一般の人から批判されてしまうこととなった。その結果、一般の人に科学に対して不信感を与えることになった。他にも、BSE(牛海綿状脳症)や薬害エイズ対策などでも同じような現象が見られた。

このような「固い科学観」では、「確実で厳密な科学的知見基づいて決定しなければならない」「科学的知見ができるまで明確な原因を特定してはいけない」というような考えになる。これは、「科学者のもつ作動中の科学」とは大きく異なる考え方である。

科学の公衆理解について研究しているミラーらは、一般の人たちに現実の科学がどのように動いているのかを理解してもらう必要性を指摘している。科学者は、科学研究のプロセスを説明し。科学者の日々の努力によって、科学の知見は日進月歩で進んでいるということを説明しなければならない。これによって、一般の人と科学者との間のディスコミュニケーションを消失できるようになる。

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