地域固有の知識体系(IKS: Indigenous Knowledge System)

科学技術社会論

ホッパーによれば、地域固有の知識体系とは、「特定の地理的場所にいる地域固有の人々が、自分自身を認識するために保持し使用する知識や技術の集約」である。地域固有の知識は、文化的文脈とその地方独自の風習に深く関わっている。また、この知識は個人の利益のためではなく、社会全体のために使われることが是とされる。

過去500年にわたり、地域固有の知識体系は、西洋の価値観に基づいて認識されてきた。欧州は、その影響を世界に広める中で西洋の価値観が唯一の知識の起源であるかのような態度をとった。特に、西洋各国が進めた植民地化は、それぞれの地域の伝統や知識を劣ったものとみなし西洋の価値観が押し付けられる原因となった。植民地化されたものの役割として、西洋知識の消費者があてがわれた。西洋の視点による技術と科学は、植民地化によってもたらされた社会の文明化を測るものとして使用された。これは植民地の人々の生活様式全体と、精神的枠組みをレベルの低いものとみなす結果をもたらした。

それにもかかわらず、植民地各地の自己決定の探求は政治的開放を重要視していた。独立した国家となるために、大学の設立や教育の発展などが進められた。しかし、植民地の人々は西洋の知識体系に基づいた近代化をすすめていくことに賛同した。そのため、50年以上にわたりアフリカでは、自分たちの知識固有の知識を無価値とし、西洋の価値観で発展をした。

IKSのジレンマは、狭義の知識によって特徴づけられる。現在、アフリカなどの植民地化されていた地域において、西洋の分類法によって何が知識を構成するのかという定義をいまだに与え続けている。重要な挑戦は、「意義のある」知識生産を犠牲にして、知識分野の現在の焦点が「外部の」知識の配布と調整にあることだ。アフリカの大学研究やサイエンスコミュニケーションでは、西洋の学識団体に対する知的な従属という結果をもたらしている。情報の国家体制が、知識生産者と消費者のあいだの弱い連携に基づいてしまっているのである。

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