リスクコミュニケーション

科学技術社会論
現代の事例から学ぶサイエンスコミュニケーション:科学技術と社会とのかかわり,その課題とジレンマ

リスクは文化、社会、心理という3つの側面から捉えられる。

科学におけるリスクは、その国における文化的、社会的背景が反映される。例えば、工業発展期においては、国家の発展をもたらす科学技術はリスクだとはあまり思われない。また、社会学的にはリスクというものは、現代社会のあり方を規定するものとして位置づけられている。

リスクの心理的側面は、文化的、社会的側面よりも膨大な研究が進められており、人間がリスクを認識することへの示唆をもたらしている。とくに、リスクコミュニケーターが気をつけておくべき2つの観点がある。

  • 心理測定モデル
  • 楽観バイアス

心理測定モデルでは、個人が様々なハザードをどのようにリスクとして知覚するのか、そして、なぜあるハザードを他のハザードよりもより重要視するのかについて示唆を与えてくれる。

また、楽観バイアスとは、他人は被害にあったかもしれないが、自分は被害にあうことはないと考える傾向である。

このような人間の心理の研究から、研究者やリスクコミュニケーターは「人間はリスクに対してバイアスがかかっている」ということを認識しなければならない。実際、アンダーソンとスピッツバーグは、これらのバイアスについて調べ、リスク知覚がどのような条件で高まるのかを整理した。

このような人間の特性がある中、リスクコミュニケーターは、どのようにリスクコミュニケーションを推進すればよいだろうか。効果的な、リスクコミュニケーションの手法については様々な研究者が研究を進めている。

クリムスキーとプラフは、リスクコミュニケーションの概念には以下の5つの次元があると述べた。

  • 意図
  • コンテンツ
  • 聴衆
  • 情報源
  • 道筋

また、フィッシャーはリスクコミュニケーターが困難に対処する際の3つのポイントを示している。

  • コミュニケーションの目的を明確にする
  • 科学が聴衆の目に触れるように、努力する
  • 社会全体としてのリスクの釣り合いを考慮する

また、リスクのメッセージは、以下の7つの要素を押さえる必要があるとされる。

  • メッセージは明快でわかりやすく
  • 起こり得る誤解に注意を払う
  • 情報を提供することと影響を与えることを区別する
  • 個人に対する影響を提示する
  • 不確実性を明示する
  • リスク比較を効果的に使うことの困難性を自覚する
  • リスクメッセージは完全なものにする

また、全米研究評議会は以下の6つの教訓を提案した。

  • 人々は単純化する
  • 人々の考えを変えることは難しい
  • 人々は見たものを覚えている
  • 人々は受け取った情報の欠点を見つけるのが得意ではない
  • 人々はリスクの大きさではなく、何がリスクであるかについて意見の不一致がある
  • 人々がリスク論争の争点を見出すことは難しい

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