代替政策の誠実な仲介者(Honest Broker of Policy Alternatives)

科学技術社会論
現代の事例から学ぶサイエンスコミュニケーション:科学技術と社会とのかかわり,その課題とジレンマ

ロジャー・A・ピールク・ジュニアによれは、科学者は政策決定に関与する際、以下の4つの役割を果たすことができる。

  • 純粋科学者:科学についての基本情報をただ提供する
  • 科学の調停者:質問に対して適切な科学的な情報を提供する
  • 課題提唱者:政策策定者が意思決定をするうえで、良い成果を得るために、十分に関心をもちうるような情報を提供する
  • 代替政策の誠実な仲介者:様々な関連する情報を提供し、政策決定者が自身の目的や価値に基づいた選択をできるように補助する

ピールクは、課題提唱者、純粋科学者、科学の調停者は特定の意思決定の成果を余儀なくし、政策決定者の法的な役割を犯す可能性がある。そのために、意識的か無意識的かにかかわらず、科学者の情報に関連する政策が順次選ばれることになる。一方、代替政策の誠実な仲介者のみが、政策決定者の権利を意識的に擁護する存在となる。また、謙虚で信用があり法的、政治的正統性があるものが有用な情報であろうとするマックニーの主張にあうのも代替政策の誠実な仲介者のみである。

科学的知識の提供の際は、科学者と政策決定者同士が、常にコミュニケーションができる状況にするべきであり、どのような情報が有益なのかを理解する必要がある。そのために科学者は、政策決定者のニーズに「戦略的聴講」を行い、ニーズに答えるように注意を払う必要がある。科学者は、政策決定者が直面している課題、政策決定までの期限、問題が起こった地域、他のステークホルダーの関与など様々な要素を考慮しなければならない。これらの要素を考慮することで、はじめて科学者は有益な情報を提供するものとして活躍できるようになる。

また、科学者は、政策決定に関する情報を提供する一方で、批判的役割もある。科学者は、問題と目標について語る役割を果たさなければならないこともある。ここで重要なのは、ピールクの代替政策の誠実な仲介者の考えを排除するのではなく、それを受容することである。科学者は、自身が提供する情報が信頼性を持ち、合法的でなければならず、同時に、政策決定者や社会などの幅広い対話を行い、問題点を議題にあげる努力をする必要がある。

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