F.ナイチンゲールのローズダイアグラム

科学技術社会論

F.ナイチンゲールはクリミア戦争で看護師として関わる中で、戦争で負傷するよりも、感染症によって亡くなる兵士が多いことに気づいた。この気づきをもとに、政府へ感染症対策が重要であることを伝えるときに利用したのが、ローズダイアグラムである。このローズダイアグラムという表現を用いることで、感染症対策がいかに重要であるかを政府に印象づけることができ、速やかに対策が実施されることになった。

https://www.historyofinformation.com/detail.php?id=3360

ローズダイアグラムでは、死亡数はリング状の節として月別で表現されている。また、1つの円が1つの年に該当する。外側の灰色は感染症による死者数、ピンクの部分は、負傷による死者数、黒色の部分はその他の死者数を表す。それぞれの扇形の部分の面積がデータの値の変化量を表している。

一方で、通常の表で表現した場合、負傷による死者数、感染症による死者数、その他の死者数の数値が具体的にかかれている。

レフメイヤーによると、ナイチンゲールのメンターであったウィリアム・ファーは通常の表の方が「フェア」であると考え、表を用いて意見を表明することを望んだ。たしかに、通常の表から得られる情報は、客観的で誰もが同じような知見が得られるというメリットがある。一方で、通常の表から何か気づきや意見を得ることは難しい。特に、科学的思考の訓練を受けていない人にとってはなおさらであろう。

一方、ローズダイアグラムは、データにナイチンゲール自身の「偏見」が加わった表現である。この表現をすることで、図の作成者の目的や意図を反映させられるので、ある特徴を強調したり、逆に、消したりできるようになる。しかし、不適切な図の使い方をしてしまうと、データから誤った印象を与えてしまったり、間違ったメッセージを伝えてしまったりする危険性がある。

このように、データそのものだけでなく、データの表現方法によっても、私たちは、データに対する印象が大きく変化する。そのため、それぞれの目的に応じて、適切なグラフィック表現を選択しなければならない。

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