科学と民主主義

科学技術社会論
科学技術社会論の挑戦1 科学技術社会論とは何か (科学技術社会論の挑戦 1)

民主制による政治は、19世紀までは、「一般市民による政治では秩序を保てない」としてあまり良いものとしては考えられてこなかった。しかし、19世紀半ばになり、古代ギリシャの民主制が注目され、現在のように民主主義が肯定的なものとして捉えられるようになった。

民主主義の理想はルソーによれば、全員参加の政治である。全員が政策について理解した上で議論を行い、平等な投票で決定していくことが重要である。しかし、国民全員が政治に参加する直接民主制は現実的ではない。そのため、多くの国では、間接民主制が取られている。この制度は、直接民主制での懸念点であるファシズムを抑えるはたらきも果たしている。この間接民主制では、少数の優れた人間たちによって政治を行うという発想も含まれている。

上記より、民主主義は「自由主義的理解」と「共和主義的理解」という2つの側面があると考えられる。「自由主義的理解」では、個人の意見を尊重し、参加の機会を保証するという面がある。一方で、「共和主義的理解」はより優れた人間による判断を尊重するという面がある。前者では、個人の「自由」が尊重され、後者は「社会の連帯と公共性」がより尊重される。

一方で、科学者の世界は博士号を獲得したような一部の人たちで構成されている。このような社会構造をマイケル・ポラニーは「科学の共和国」と表現した。この「科学の共和国」内では、それぞれの研究者がそれぞれの研究成果を評価している。

つまり、「科学の共和国」は、特別な訓練を受けた一部の人間による知識の正当化機能をもっており、これは全員参加を前提とする民主主義とは相容れない。しかし、このような科学と民主主義の違いは最近までは議論されてこなかった。このような科学と民主主義の関係を明らかにしようとする運動は、共産主義やファシズムなど他の思想が出現した1930年代、40年代において、ウィーン学団やポパー、マートンによって行われた。

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